当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕89号

ほのぼの豊かな高齢社会のために

高齢社会日本

わが国の社会は、もうずいぶん前から、高齢化の道を着々と歩んでいます。つまり、政府が高齢者と定義づけた65歳以上の人口の総人口に占める割合(高齢化率)が、年々増え続けているということです。

昭和45年に高齢化率が7%を超え、日本は「高齢化社会」に入りました。平成6年には14%を超えて「高齢社会」になり、さらに平成22年には21%を超えて「超高齢化社会」になる見込みだといいます。(これらの呼称は、国連の報告書等で使用されているものです。以下では特に区別せず「高齢社会」といいます。)

社会の高齢化は、企業の経営や市民の暮らしにこれまでになかったさまざまな影響を与えつつあります。特に、「就労人口の減少」と「高齢者の生活を支えるための若年層の負担増」という問題が大きく、全ての年齢層に暗い影を落としています。

巷では、就労人口の減少対策の一つとして、多くの外国人を積極的に受け入れ雇用しようという案が語られていますが、これは慎重に対応していく必要があります。

これまで多くの外国人を受け入れてきたフランスやドイツなどでさえ、大きな社会問題になっているのです。ましてや、島国育ちで唯我独尊の私たち日本人が、外国人と安定したコミュニケーションなど取れるわけがありません。

定年制廃止を法制化せよ

40年前、一般のサラリーマンの就業は定年制で55歳くらいまででした。

20年前になると定年は60歳になり、就労者数の減少対策として一部の企業では65歳までの再雇用制が導入されているものの、60歳定年制は現在も続いています。

この定年制を廃止し、就労の意欲も能力もある人々から強制的に仕事を取り上げることを止める、つまり健康で就労意欲が続く限り雇用を保証するよう、法律で定めるべきだと思います。

これにより、就労人口は確実に増え、高齢社会における就労人口減少問題が相当解消されます。

元気年齢や生き方は本来一人一人異なるはずなのに、一律に人生の賞味期間を設けて線引きし、期限切れの人たちを廃棄処分対象のごとくに分類する定年制は、ただちに廃止すべきです。

賃金制度の改正を

20世紀に完成した企業社会では、定年制と合わせて年功序列賃金制度が採用されてきました。

これは、一般的に年齢の高い者ほど高い賃金を支給する制度ですが、職場においては賃金の高低が地位・身分の高低を支配し、若い社員は実力があっても職務上の立場を不当に押し下げられていました。

また、多くの企業にとっては、高年齢者に対する人件費支出が増大する一方、高賃金を得るために(業績貢献度と関係なく)在職年数を重ねる社員が増えるという悪循環をもたらしてきました。

この年功序列賃金制度を廃止し、各個人が会社の示した成果基準にどれだけ応えたかによって賃金を支給する、いわゆる成果型賃金制度にすべきであります。

これにより、高年齢者の雇用が企業の財務を圧迫することもなく、若い人材の重要ポストへの登用にも影響を与えない環境が実現します。

現状では、長年続いてきた年功序列賃金制度を廃止することは困難ですが、先に述べた定年制廃止が法制化されれば、それに伴って、年功序列賃金制度を廃止する動きが一気に加速するでしょう。

暮らし方を見直そう

定年制が廃止されれば、高齢者も体力と意欲が続く限り働くことができます。

高齢社会の主人公である高齢者には、子供の教育費も住宅ローンもありません。子供部屋付きの大きな住宅もいりません。

肉もケーキも多くは必要なく、メザシと梅干があればいい。衣類だって流行を追いまわすこともない。

高齢社会は小消費の社会ですから、体力と意欲に応じて働けば、若い者に頼らなくても何とかなります。今まで通りの高生産を追い続ける必要はありません。

ハイカロリーを摂取しダイエットに苦悩する、そんな馬鹿げた生活に終止符を打って、ほのぼの豊かに暮らすことを考えようではありませんか。

国家という生活装置にこうやってちょっと修正を加えれば、高齢社会もそう心配なく生きていけます。病気に対するセーフティネットだけは必要でしょうが。

遊自耕88号に戻る

遊自耕90号を見る

このページのトップに戻る