請求棄却される

飛翔82号('04年3月号)の「遊自耕」で問題にしていた、岐阜市が行なった「フラットデッキ使用不承諾」の判断に関係して、当社は、昨年(04年)5月、中央建設工事紛争審査会(以下、審査会に略)に仲裁申請を出していましたが、今年2月仲裁判断が下り、JVの請求は棄却されてしまいました。

仲裁判断書の全文を見る

申請に至るまで

JVは岐阜市に対し、「スラブ(床)の型枠工事の材料にフラットデッキを使用したい」と申請したが、一部箇所について使用を認められなかった。JVは市の判断の撤回を求めたが応じられず、工期を守るためフラットデッキによる施工が認められなかった部分について、合板型枠による工事を実施。その後JVは、市の判断により発生した増額費用(合板型枠とフラットデッキの差額)の支払を市に求めたが認められなかったため、仲裁を申請した。

詳しくは仲裁判断書「第2事案の概要」をご覧下さい。

主な争点

そもそもJVがこの仲裁申請をしたのは、(増額費用の支払を云々するのではなく、)『「トイレ床スラブからの水漏れや雨漏りがあった場合に補修が困難」「結露により錆汁が発生する」という理由によって、市がフラットデッキの使用を不承諾にできるのかどうか』ということについての判断を求めてのことでした。

というのも、この工事の請負契約約款第1条第3項は『仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段については、この約款及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、請負者がその責任において定める』と定められており、型枠の材料に何を使用するかは、請負者である当JVが定めることができる事項であると考えていたからです。

ただ、この条文には「特別の定めがある場合を除き」とあり、その「特別の定め」が、共通仕様書6.9.3(a)(2)『(せき板の材料は・・・)

所要の品質を確保できるものとし、監督職員の承諾を受ける』を指すということは岐阜市とJV双方が一致するところでしたが、この中の「所要の品質」が何を指すかという点が問題となりました。

詳しくは仲裁判断書「2争点」をご覧下さい

JVの主張する「所要の品質」

コンクリート工事に関する共通仕様書[型枠]の[一般事項(b)]に、「型枠は・・・6.2.5に定める所要の品質が得られるように設計する」とあることから、[6.2.5コンクリートの仕上り]で定められた「コンクリート部材の位置及び断面寸法の許容差」「コンクリート表面の仕上り状態」を指す。

岐阜市の主張する「所要の品質」

JVの指すものに限らず、共通仕様書コンクリート工事の[一般事項]に記載される「コンクリートの形状や寸法、表面状態や強度、また構造耐力、耐久性、耐火性等に対する有害な欠陥がないこと」も含む。なぜなら、フラットデッキが、工事後も捨て型枠としてコンクリートと一体で残存するため、その評価は、コンクリート本体に要求されると同様の判断基準によってその適合性を判断されなければならないから。

仲裁判断を受けて

審査会の判断は、ほぼ岐阜市の主張に添った形で出されてしまいました。

しかし、共通仕様書6.9.3(a)(2)が原則に対する例外、すなわち本来請負者が有する権限を制限するという性格を持つものである以上、権限を制限する基準等は具体的に明示されているべきであり、そうでない場合は限定的に解釈されなければいけないと思います。そうでなければ、監督職員の判断はあいまいで主観的(恣意的)なものとなってしまい、契約約款で定められた請負人の権限はないものに等しくなってしまいます。

「フラットデッキ」は、既に多くの工事で利用されており、市が指摘するような問題は起きない材料であることは技術者の間では常識ですので、[コンクリートの仕上り]についてのチェックをすれば充分です。なのに審査会は、例外規定を不当に拡大解釈して、市の監督職員に、その使用の適否を判断する権限を必要以上に広く認めたのです。

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