当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕99号

深刻な経営危機下で迎える創立20周年

減収で終った2007年度

2007年度の当社の売上高は約36億円、前年度に比べて5億円の減となりました。特に、完工高(建築工事請負の売上高)は前年より10億円も減って21億円しか上がらず、約3分の1も減少してしまいました。(なお、営業利益は約1.9億円で横這いでした。)

こんな結果に終わった最大の要因は、言うまでもなく、昨年6月に施行された改正建築基準法です。全社の売上高の減が5億円で留まったのは、売上高の約25%を占める建築以外のサービスが増収になったからです。

こんな1年を経て、当社は今年9月9日に創立20周年を迎えます。

今年度の業績見通しは明るい?

今年4月、私は全社員に今年度の当社の業績見通しを述べました。

改正建築基準法の影響で着工が遅れていた建築案件が今年度は完工すること、大型工事の発注代行サービスを4件ほど受注できる見込みがあること、800戸近くある賃貸マンション、6棟のウィークリーマンションとホテルの業績が引き続き増収増益傾向にあり、グループホームの経営(高齢者福祉事業)も安定的に推移すると思われること。

このような根拠から、今年は初めて売上げで50億円を超え、利益もそれに比例して改善される。今年度は明るい見通しである、と語ったのです。

一方、不安要素として、原油の高騰による商品やサービスの料金の値上げが、一般消費者の消費の落ち込みを招き始めているということも指摘し、社員には今年は良いが来年は大変であるとも伝えました。

急激な状況変化

全社会議から2ヶ月が過ぎた6月、私は、管理部門担当取締役川瀬から、当社の業績見通しが深刻に悪化しているとの報告を受けました。経営危機は来年ではなく間近に迫っており、対策を急がなければならない状況になっていたのです。

よく考えてみると、今年建設を予定していた工場の着工が、製品販売の見通しの悪化と建築費の高騰の煽りを受けて、中断されました。また、基礎工事まで進んでいた事務所の工事も、銀行融資の問題から中断されました。この2件は再開の目途が立っていません。大型の発注代行案件も銀行の貸付規制により計画が進まず、事業は取り止めになる模様です。

こんな風に、4月に予定していた案件が6月の時点で13億円分も減少し、今年度になってからの引き合いも激減していました。これは、この数年ファンド参入でバブル化していた市場に変化が生じ、金融投資の締め付けや景気の後退などによる、需要の計り知れない減少によるものと思われます。

危機を乗り越えていくために、この状況変化を見逃してきた私の責任を明確にし、役員会の意識を改革して、会社組織を機能的な形態に改めました。8月1日には全社員に経営が危機的状況にあることを示し、引き続いて経営再建計画を提示することも伝えました。

経営改革の方向性

長期間に渡り増収・増益を目標にしてきた経営を、建築分野では当面、減収・減益、規模縮小の方向に転換することにします。1994年度に84兆円に達した建設総投資額は2007年度には49兆円に減少し、建設需要は引き続き縮減していくと思われます。経営の困難は各社共通であり、当社だけのものではありません。

当社には、多くの建設設計事務所や総合建設会社にはないポリシーとシステムがあり、それをより多くの顧客に理解してもらえば差別化の道が開かれます。また、直接建築工事に関係する事業だけでなく、当社の設計力と施工力を活用した生活擁護型事業を、よりいっそう多角的に拡大していきます。

労苦を共にする社員達と危機を乗り切る

祝賀の中で迎えたかった創立20周年ですが、思うようになりません。困難から逃れず、困難を成長のための肥しにし、峠越えを試みる能動的な社員達と、危機を乗り越え新しいステージに立つことにします。

今後もご支援いただきますようお願いいたします。

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