当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕 不常識を食らう シリーズno.143

働かされない働き方を考える

働かせて設ける仕組み

会社では、例えば「○日の間に、△△を用いて(△△というやり方で)、□個のものを作りなさい」というような指示に従って働く社員をスタッフなどと呼び、「頭を使い工夫を重ねて、1年間で○○円の利益を上げなさい。方法は任せる」と言われて働く社員を管理職者などと呼びます。

前者の働き方は“働かされている”、後者は“働かされていない”と見る見方が、世間にはあります。また、中小企業にあっては、前者に対して支給される賃金は15万円から30万円、後者に対しては25万円から50万円といったところが相場のようです。

このような中で、社員は、“働かされる”という状況から脱し、高い賃金を得るために、より上位の職に就くことを目指して、一生懸命働きます。

一方、会社は、スタッフとして入社した者に対して、一刻も早く上位職者になっていくことを要請します。上位職になればなるほど、複雑な役割を持たせ、指示を待つだけでない働き方を求めます。

そして、勤勉に働き上位に登っていく者を高く評価し、そうでない者は「怠け者」「変人」「空気が読めない奴」などと人格も含めて低く見て、賃金も低いままにします。上位に登っていく者が大切で、登っていかない者は厄介者とみなされて、人格差別が生じています。

資本主義社会において、会社は、このような仕組みや風土によって社員をめまぐるしく働かせ、利益を上げているのです。

働かされている・いないの錯覚

私には、スタッフと管理職者のいずれもが“働かされている”、むしろ、後者の方がより強力に働かされていると映ります。前者は一定時間を超えれば働かないのに対して、後者は時間による制限がなく、働かない時間を切り詰めながら長時間働くのが現実だからです。

(私は、管理職者の最上位に位置する社長ですが、社員の誰と比べても休みが少なく、長時間働いています。社長は労基法で守ってもらえないので、仕方ありません。)

社員は、上位職になるほど働かされていないと思わせてくれる仕組みの上で、錯覚しながら働かされているのです。

利益の配分処理を決めるのは株主

会社は、パートタイマーから社長まで(社長も含まれる)の労働によって、利益を上げています。しかし、その利益をどう配分処理するかは、会社の株主(出資者・資本家)の意志によって決まり、働いて利益を生み出した者には何の権限もありません。

当然、株主への利益分配(配当)額や、役員報酬額についても、株主によって決められます。ユニクロの柳井社長の年間報酬(配当も含む)は52億4,300万円、希望社の社長は3,000万円。人のことはどちらでもよいが、私の役員報酬は月額180万円で、この額と社員の賃金との差は相当なものです。

ユニクロの社長の報酬も希望社社長の報酬も、多くの社員が生み出した剰余価値を収奪し得たもの、すなわち搾取したものです。

搾取しない・されない生産組織

資本主義社会が爛熟期を迎え、格差が著しく拡大しています。ほんの一部の者に利益が独占されることを止めなければ、低所得者の賃金を引き上げることはできません。

会社という組織の雇う・雇われる関係、働かせる・働かされる関係を壊し、自覚的な人達により搾取しない・されない生産組織を作って、共同して働く小集団を実現していきます。

無理やり求めることはしませんが、よく考えて新しい生き方を掴んでいきましょう。 (四十八)

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