当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕97号

2008年度の始まりに、迷える子羊達に贈る

新理念誕生

1年6ヶ月の学習と討論を経て、希望社に新しい企業理念が誕生し、これまでの理念に加わりました。

「なぜ働くのか? 自ら考え実践し、自ら殻を打ち破る」

この理念は、“「働かされて働く働き方をさせない会社」と「働かされて働く働き方をしない社員」を創る”という、私が20年前に会社を設立した時の強い思いの現実的到達点を示すものであります。

理念委員会の成果

【「働かされている」「働かされていない」あなたはどっち?】

これは、理念委員会が4ヶ月かけて議論を行った重要なテーマのひとつです。

初め、理念委員のほぼ全員が「働かされていない」と答えました。驚くではありませんか!当社の実験牧場の実験で社員がみごとに調教されてしまっていたのです。

人は誰でも、自分の体験や周囲の意見に影響されながら自分の考えを作っていきます。しかし、その考えには客観性があるかというと、とても主観的なものにすぎません。本当に「働かされていない」のか、検証しなければなりません。

委員たちはその後、人類の誕生から現代までの労働と生産の関係を学習し、討論し、これをくり返しながら自分の経験と主観から抜け出すきっかけをつかんでいきました。その結果、ひとまず全員が「働かされている」と考えるようになりました。

さらに、途中で理念委員会を真剣・真摯に討論する能動的な委員で再編し、討論を続けた結果、理解のレベルは異なっていますが、「働かされている」という認識を全委員で共有するに至りました。

この結論に至る過程は、真理への接近であり、私たちの哲学入門講座でもありました。

また、私の空想的理想主義とでも言うべき「雇う・雇われるという雇用関係を持たない生産システムの模索」は、非現実的なものであったことも良く分かりました。19世紀に勃興した市民革命とその勝利者であるブルジョアジーの社会支配が続く限り、私達は雇用と就労という関係から逃れることは出来ません。

「働かせる経営」の限界

ほとんどの経営者は従業員に「命じられた労働を従順に行う」ことを求めることによって、資本主義経済の絶対命題である「より高い収益の実現」を図ろうとしてきました。

しかし、大多数の従業員は、「労働時間はできるだけ短いほうがいいし、本来は無い方がいい。労働は人間の生活の一部を売り渡すことであり、賃金を得るためにやっているのだから」と思っています。

ですから、機械化や生産システムの改良により労働時間が短くなっても、従業員は奴隷の魂を持ち続け、労働に誇りを抱くことはできないでしょう。

経営者達は、命じたことしかしない社員を自ら作ってしまい、より高い生産性を実現させる可能性をつぶすことになってしまっているのです。

経営者達はまた、30年ほど前から“社会貢献”という企業理念を掲げるようになってきました。がこれも、労働を社会的に有意義なものだと思わせて多くの労働者を集め働かせるためのまやかし=調教の手段にすぎず、従業員が自ら意識の改革をしているのではありません。

自分の人生は自分で切り開け

希望社は高所得者ではない普通の市民の要望や利益に応えられる企業でありたいと考え、そのために生産コストを抑えた会社創りをしています。高い利益を得たり、従業員に高い賃金を支払ったりするために業務を行っているのではありません。

今回加わった新理念は、自分達が働かされていることが分かりながら、奴隷の魂から自立した人間への道を希求しつつ働くことを表すものです。と同時に、この理念の実践に努めることで、希望社の業務の目的や意味がよくわかる社員に成長していくことができます。

会社は社員に対して、技術や人格を高める教育をするとともに、経験と主観という古い価値観の制限を取り除き客観と真理を求めることができるよう社員を指導し、社員が新理念を実践する後押しをします。

一人ひとりの社員に、成長と停滞を繰り返しながら大きくなって欲しいと思っていますが、会社のための調教はしません。

自分の人生は自分で切り開いていくものです。そして、この会社で働くか否かの選択が自由にできる環境を作ることが「働かされて働く働き方をさせない」会社の役割であります。

以上、新理念決定に当たり理念に込められた知と魂を社員に贈ります。

遊自耕96号に戻る

遊自耕98号を見る

このページのトップに戻る